うちのチームではチーム内のコミュニケーション手段として「BAND」というアプリケーションを使用しています。選手・保護者・スタッフ全員がBANDにユーザ登録して、チームの予定や共有事項などをここで確認します。
そしてBANDには「アルバム」という機能があります。
そこには試合だけでなく普段の練習時の写真・動画などが格納されています。ここにはスタッフだけでなく、練習を見学に来た保護者がそれぞれの携帯や持参したカメラを使って撮影した写真や動画をアルバムに登録してチームで共有しています。チーム結成して6ヶ月ですが、すでに3,000個を超える写真・動画ファイルが格納されています。
なぜここまでたくさんの情報を保管しているか。
私なりの想いがあります。
現代はさまざまな指標が数値化されています。
Rapsodoを使えば球速、回転数、回転軸、角度など、BLASTを使えばスイングに関する様々な指標を計測することが可能です。これはこれで有益な情報です。ただ一方でこれらの数値に頼りすぎて自らが「感じること」に対して鈍感になっていくことに対する懸念もあります。
例えば本塁打をたくさん打つ一流の打者は「この打球は(スタンドに)行ったな」という判断をほぼ打った瞬間に行います。「打球速度や角度などの数値がないと判断できない」なんて選手はいないでしょう。数値はあくまでも結果を確認するためのものであって、どうやってその数値を出したのか、今のプレーは数値が出せるやり方か?といったことを感じることがとても重要だと思っています。
うちの選手には「数字を見ないと判断できない」という鈍感な選手になってほしくない。もちろん感覚と数値がズレないように答え合わせとして数字の情報を提供しますが、あくまでも大事なことは「感じること」だと思っています。たくさんの画像・映像データを残しているのも「自分が思っている投球・打撃の感覚と一致しているか?」という答え合わせの材料です。流行りのドリルをやらせるだけ、最新の機器を導入して計測するだけで「最先端の指導をやっている」と豪語するのは単なる指導者の自己満足だと思います。その結果、選手の「感じる力」を奪い、鈍感な選手を量産しているとしたら、それは悲劇だと思います。そして指導者は選手に「数字から何を読み取るのか?」「数字に現れないことで何を感じ取ったか?」「繰り返し取り組むドリルの中で何を感じ取ったか?」という感覚を育む支援をしてこそ指導だと思います。
これは数字・データを全て否定するものではありません。実際に私に会ったことがある人は分かると思いますが、私自身、指導者の中でも「数字」「データ」が好きな部類の人間だと思います。そういう人間だからこそ数字に囚われ過ぎて数字に現れないことに対して鈍感になりたくないとも思います。
最近、うちのチームでは練習中に「感覚」や「意識」などについて、選手同士で教え合う場面が増えてきたように思います。全てにおいて指導者が介入するのではなく、選手が自分たちで自立して問題に取り組む姿勢。目指してきた姿に近づいてきました。